永遠のロックスター シド・ヴィシャス
彼の人気は永遠に尽きないだろう。
人気の秘密の一つに謎が多いことが挙げられるのでは無いだろうか。
今回は彼の謎に焦点を当ててみようと思う。
彼は楽器が出来なかったとかSex pistolsでもベースを弾いていないと言われているが、事実とは異なっている。
ピストルズ以前は「スージー・アンド・ザ・バンジーズ」というバンドでドラマーとして活躍していた。
つまりドラムは出来たのである。
では、何故ベーシストとしてSex Pistolsに加わったのかが疑問に残るところだが、ヴォーカルのジョニー・ロットンの推薦があったようだ。
ジョニー・ロットンとSidはファッション関係の専門学校時代からの友人。
その縁もあって初代ベーシストにして唯一の作曲者グレン・マトロックがSex pistolsを脱退すると、バンドのマネージャーであったマルコム・マクラレンからの誘いがあって、後任のベーシストとなった。
Sidは、Sex Pistolsの熱狂的なファンで、ライブでも目立つ存在だったようだ。
Sidの本名は、ジョン・サイモン・リッチー。
「シド」=ヴォーカルのジョニー・ロットンが飼っていたハムスターの名前
「ヴィシャス」=「凶暴な」
この2つを組み合わせて「シド・ヴィシャス」となった。
ベースに関しては素人だったが、Pistols加入後にプレイを覚えていった。
元々ドラムを担当していたのだから、ベースに関しては素人でもリズム感やライブパフォーマンスは持ち前のものがあったのだろう。
なので、楽器が出来なかったとか言われているが、「実際には弾けていた」これが事実である。
そして、意外と知られていないのが、Sidとヴィヴィアンウエストウッドの関係である。
Sidというより、Pistolsと言った方が良いかも知れない。
彼らのファッションの背後には、ヴィヴィアンがいたのである。
ヴィヴィアンは、「sex」というブティックを経営していた。
店内はポルノの落書きスプレーとラバー・カーテンで飾られ、レザーボンテージなどのセックスやフェティッシュをモチーフとしたファッションが並べられていた。
そこのお店の常連客だったのがシドとジョニーロットンである。
そして、後にヴィヴィアンはSex pistolsをプロデュースしていくことになるのである。
世界に大きな影響を与えた彼らのパンクファッションだが、背景にはヴィヴィアンがいたということである。
こうして、Sex pistols いや、Sid は一躍スターダムへと駆け上がっていく。
1978年10月12日、ニューヨークのチェルシー・ホテル100号室にてナンシーの刺殺体が発見され、同じ部屋にいたSidが逮捕された。
「その時Sidはドラッグで昏睡状態にあったのだから彼が殺したはずはない」
「凶器のナイフがSidの私物であったことから、彼がナンシーを殺害したのは間違いない」
「大金2万ドルが無くなっていた。第三者による殺害に違いない」
「二人で自殺を図り、ドラッグで昏睡状態に陥ったSidを見て死んだと思ったに違いない」
実に様々な説がある。
実は、ナンシーの死の真相は明らかにされていない。
Sidの母親アン・ベヴァリーが、1985年に作家のアラン・パーカーに連絡し、「息子の無念を晴らすために事件をもう一度調べて欲しい」と依頼している。
1996年9月には、アラン・パーカー宛てで息子の無実を証明して欲しい旨を記した一通の手紙を残し、アンは自殺している。
これにもとづきパーカーは、182人もの関係者にインタビューを敢行、ニューヨーク市警察の捜査資料を洗い直し、チェルシーホテル100号室で一体何が起こったのかを探っている。
そして、パーカーは今まで3冊もの本を執筆している。
その内容を映画化したものが『フー・キルド・ナンシー』である。
予告編の動画があったので紹介する。
当時の映像をそのまま使っているので予告編だけでも見応えがある。
いろいろ調べたが、ナンシーの死の真相は明らかにされていない。
1979年2月2日、Sidは麻薬の過剰摂取により死亡したとされている。
Sidが死に至った直接的な理由は、収監され完全にヘロインが抜けきった体に、高純度のヘロインを収監以前に打っていたのと同じ感覚で大量に摂取した事によるものとされている。
そのヘロインは、その夜、シドに哀願された彼の母親が渡した物だった。
Sidはナンシーの死後、何度も自殺未遂を図っていたり暴力事件を起こして収監されるなど荒れに荒れている。
そして、Sidが死んだときに身に着けていた革ジャンのポケットから一枚の手紙が出てきている。
『俺達は死の取り決めがあったから、一緒に死ぬ約束をしてたんだ。 こっちも約束を守らなきゃいけない。
今からいけば、まだ彼女に追いつけるかも知れない。
お願いだ。死んだらあいつの隣に埋めてくれ。
レザー・ジャケットとレザー・ジーンズとバイク・ブーツを死装束にして、さいなら。』
この手紙の内容からもSidがナンシーをどれだけ愛し必要としていたのかが分かる。
きっとSidは、ナンシーのいないこの世に未練など無く、ただ一緒にいたかったのだろう。
Sidの母親アンは、「ナンシーの墓の隣に埋葬して欲しい」という息子の遺言を果たそうとするが、ナンシーの両親に拒絶されたためにシドの墓を掘り起こし、彼の遺灰をナンシーの墓に撒いてシドの思いを果たしたとされている。